税務トピックス
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■ 令和6年11月の税務トピックス [2024.12.12]
令和6年11月の税務トピックスは「年間権利行使価額の限度額の引き上げ等の見直し」です。
※お知らせの「年間権利行使価額の限度額の引き上げ等の見直し」をご覧ください。
■ 令和6年10月の税務トピックス [2024.10.30]
令和6年10月の税務トピックスは「中堅企業の賃上げ税制の創設」です。
※お知らせの「中堅企業の賃上げ税制の創設」をご覧ください。
■ 令和6年9月の税務トピックス [2024.10.02]
令和6年9月の税務トピックスは「繰越税額控除制度の創設」です。
※お知らせの「繰越税額控除制度の創設」をご覧ください。
■ 令和6年8月の税務トピックス [2024.10.02]
令和6年8月の税務トピックスは「特定資産の買換えの届出書の提出義務の創設」です。
※お知らせの「特定資産の買換えの届出書の提出義務の創設」をご覧ください。
■ 令和6年7月の税務トピックス [2024.07.29]
令和6年7月の税務トピックスは「定額減税調整給付金について」です。
※お知らせの「定額減税調整給付金について」をご覧ください。
■ 令和6年6月の税務トピックス [2024.07.01]
令和6年6月の税務トピックスは「個人住民税の定額減税について」です。
※お知らせの「個人住民税の定額減税について」をご覧ください。
■ 令和6年5月の税務トピックス [2024.06.03]
令和6年5月の税務トピックスは「所得税の定額減税について」です。
※お知らせの「所得税の定額減税について」をご覧ください。
■ 令和6年4月の税務トピックス [2024.04.18]
令和6年4月の税務トピックスは「国民健康保険税の負担増について」です。
※お知らせの「国民健康保険税の負担増について」をご覧ください。
■ 令和6年3月の税務トピックス [2024.03.18]
令和6年3月の税務トピックスは「飲食等に係る金額基準等の拡充」です。
※お知らせの「飲食等に係る金額基準等の拡充」をご覧ください。
■ 令和6年2月の税務トピックス [2024.02.28]
令和6年2月の税務トピックスは「インボイス制度開始後初めての確定申告期に向けた対応等」です。
※お知らせの「インボイス制度開始後初めての確定申告期に向けた対応等」をご覧ください。
■ 令和6年1月の税務トピックス [2024.01.23]
令和6年1月の税務トピックスは「NISA制度の抜本的拡充・恒久化」です。
※お知らせの「NISA制度の抜本的拡充・恒久化」をご覧ください。
■ 令和5年12月の税務トピックス [2023.12.20]
令和5年12月の税務トピックスは「無申告加算税制度の見直し」です。
※お知らせの「無申告加算税制度の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年11月の税務トピックス [2023.11.15]
令和5年11月の税務トピックスは「ストック・オプション税制の見直し」です。
※お知らせの「ストック・オプション税制の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年10月の税務トピックス [2023.11.10]
令和5年10月の税務トピックスは「相続税についての更正の請求に係る除斥期間の見直し」です。
※お知らせの「相続税についての更正の請求に係る除斥期間の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年9月の税務トピックス [2023.09.22]
令和5年9月の税務トピックスは「売り手側が負担する振込手数料相当額の対応」です。
※お知らせの「売り手側が負担する振込手数料相当額の対応」をご覧ください。
■ 令和5年8月の税務トピックス [2023.09.05]
令和5年8月の税務トピックスは「税務調査で重加算税の対象!」です。
※お知らせの「税務調査で重加算税の対象!」をご覧ください。
■ 令和5年7月の税務トピックス [2023.07.27]
令和5年7月の税務トピックスは「電子取引の取引情報に係る電子データの保存制度の見直し」です。
※お知らせの「電子取引の取引情報に係る電子データの保存制度の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年6月の税務トピックス [2023.06.28]
令和5年6月の税務トピックスは「暦年制度課税における相続開始前贈与の加算の見直し」です。
※お知らせの「暦年制度課税における相続開始前贈与の加算の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年5月の税務トピックス [2023.05.16]
令和5年5月の税務トピックスは「相続時精算課税制度の見直し」です。
※お知らせの「相続時精算課税制度の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年4月の税務トピックス [2023.04.21]
令和5年4月の税務トピックスは「少額な返還インボイスの交付義務の免除の創設」です。
※お知らせの「少額な返還インボイスの交付義務の免除の創設」をご覧ください。
■ 令和5年3月の税務トピックス [2023.03.20]
令和5年3月の税務トピックスは「2割特例制度の創設」です。
※お知らせの「2割特例制度の創設」をご覧ください。
■ 令和5年2月の税務トピックス [2023.02.20]
令和5年2月の税務トピックスは「国外居住親族に係る扶養控除等の見直し」です。
※お知らせの「国外居住親族に係る扶養控除等の見直し」をご覧ください。
■ 令和5年1月の税務トピックス [2023.01.27]
令和5年1月の税務トピックスは「財産債務調書制度等の見直し」です。
※お知らせの「財産債務調書制度等の見直し」をご覧ください。
■ 令和4年12月の税務トピックス [2022.12.23]
令和4年12月の税務トピックスは「雑所得を生ずべき業務に係る所得税」です。
※お知らせの「雑所得を生ずべき業務に係る所得税」をご覧ください。
■ 令和4年11月の税務トピックス [2022.11.29]
令和4年11月の税務トピックスは「口座振替・口座振込による契約書の適格請求書等の対応」です。
※お知らせの「口座振替・口座振込による契約書の適格請求書等の対応」をご覧ください。
■ 令和4年10月の税務トピックス [2022.10.25]
令和4年10月の税務トピックスは「免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」です。
※お知らせの「免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」をご覧ください。
■ 令和4年9月の税務トピックス [2022.09.22]
令和4年9月の税務トピックスは「適格請求書等保存方式の留意点」です。
※お知らせの「適格請求書等保存方式の留意点」をご覧ください。
■ 令和4年8月の税務トピックス [2022.09.01]
令和4年8月の税務トピックスは「相続に係る登録免許税の免除措置の見直し」です。
※お知らせの「相続に係る登録免許税の免除措置の見直し」をご覧ください。
■ 令和4年7月の税務トピックス [2022.07.29]
令和4年7月の税務トピックスは「法人事業税の見直し」です。
※お知らせの「法人事業税の見直し」をご覧ください。
■ 令和4年6月の税務トピックス [2022.06.17]
令和4年6月の税務トピックスは「少額な減価償却資産を取得した場合の特例制度の見直し」です。
※お知らせの「少額な減価償却資産を取得した場合の特例制度の見直し」をご覧ください。
■ 令和4年5月の税務トピックス [2022.06.06]
令和4年5月の税務トピックスは「人材確保等促進税制の抜本的見直し」です。
※お知らせの「人材確保等促進税制の抜本的見直し」をご覧ください。
■ 令和4年4月の税務トピックス [2022.04.28]
令和4年4月の税務トピックスは「中小企業者等における賃上げの促進に係る税制の見直し」です。
※お知らせの「中小企業者等における賃上げの促進に係る税制の見直し」をご覧ください。
■ 令和4年3月の税務トピックス [2022.03.25]
令和4年3月の税務トピックスは「退職所得課税の適正化」です。
※お知らせの「退職所得課税の適正化」をご覧ください。
■ 令和4年2月の税務トピックス [2022.02.24]
令和4年2月の税務トピックスは「納税管理人の選任・届出の要請措置の創設」です。
※お知らせの「納税管理人の選任・届出の要請措置の創設」をご覧ください。
■ 令和4年1月の税務トピックス [2022.01.27]
令和4年1月の税務トピックスは「国外中古建物の不動産所得に係る課税の適正化」です。
※お知らせの「国外中古建物の不動産所得に係る課税の適正化」をご覧ください。
■ 令和3年12月の税務トピックス [2021.12.23]
令和3年12月の税務トピックスは「中小企業者等における賃上げの促進に係る税制の見直し」です。
※ お知らせの 「中小企業者等における賃上げの促進に係る税制の見直し」をご覧ください。
■ 令和3年11月の税務トピックス [2021.11.19]
令和3年11月の税務トピックスは「中小企業経営強化税制の対象資産の拡充等」です。
※ お知らせの 「中小企業経営強化税制の対象資産の拡充等」をご覧ください。
■ 令和3年10月の税務トピックス [2021.10.22]
令和3年10月の税務トピックスは「中小企業投資促進税制の見直し」です。
※ お知らせの 「中小企業投資促進税制の見直し」をご覧ください。
■ 令和3年9月の税務トピックス [2021.09.30]
令和3年9月の税務トピックスは「在宅勤務手当の給与課税の判断基準」です。
※ お知らせの 「在宅勤務手当の給与課税の判断基準」をご覧ください。
■ 令和3年8月の税務トピックス [2021.08.23]
令和3年8月の税務トピックスは「住宅ローン控除の特例の適用要件等の見直し」です。
※ お知らせの 「住宅ローン控除の特例の適用要件等の見直し」をご覧ください。
■ 令和3年7月の税務トピックス [2021.07.20]
令和3年7月の税務トピックスは「人材確保等促進税制への改組」です。
※ お知らせの 「人材確保等促進税制への改組」をご覧ください。
■ 令和3年6月の税務トピックス [2021.06.23]
令和3年6月の税務トピックスは「特例経営承継相続人等の範囲の拡充」です。
※ お知らせの 「特例経営承継相続人等の範囲の拡充」をご覧ください。
■ 令和3年5月の税務トピックス [2021.06.01]
令和3年5月の税務トピックスは「株式対価M&Aを促進するための措置の創設」です。
※お知らせの「株式対価M&Aを促進するための措置の創設」をご覧ください。
■ 令和3年4月の税務トピックス [2021.04.21]
令和3年4月の税務トピックスは「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し」です。
※お知らせの「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し」をご覧ください。
■ 令和3年3月の税務トピックス [2021.04.20]
令和3年3月の税務トピックスは「税務関係書類における押印義務の見直し」です。
※お知らせの「税務関係書類における押印義務の見直し」をご覧ください。
■ 令和3年2月の税務トピックス [2021.02.16]
令和3年2月の税務トピックスは「年末調整及び確定申告における配偶者特別控除の不適用」です。
※お知らせの「年末調整及び確定申告における配偶者特別控除の不適用」をご覧ください。
■ 令和3年1月の税務トピックス [2021.01.21]
令和3年1月の税務トピックスは「給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替」です。
※お知らせの「給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替」をご覧ください。
■ 令和2年12月の税務トピックス [2020.12.15]
令和2年12月の税務トピックスは「ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除の見直し」です。
※お知らせの「ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除の見直し」をご覧ください。
■ 令和2年11月の税務トピックス [2020.11.20]
令和2年11月の税務トピックスは「利子税・還付加算金・延滞税の割合の引下げ」です。
※お知らせの「利子税・還付加算金・延滞税の割合の引下げ」をご覧ください。
■ 令和2年10月の税務トピックス [2020.10.22]
令和2年10月の税務トピックスは「欠損金の繰戻しによる還付の特例の創設」です。
※お知らせの「欠損金の繰戻しによる還付の特例の創設」をご覧ください。
■ 令和2年9月の税務トピックス [2020.09.23]
令和2年9月の税務トピックスは「企業等の生産性向上を促すための電子帳簿等保存法の見直し」です。
※お知らせの「企業等の生産性向上を促すための電子帳簿等保存法の見直し」をご覧ください。
■ 令和2年8月の税務トピックス [2020.08.24]
令和2年8月の税務トピックスは「家賃支援給付金の取扱い」です。
※お知らせの「家賃支援給付金の取扱い」をご覧ください。
■ 令和2年7月の税務トピックス [2020.08.14]
令和2年7月の税務トピックスは「持続化給付金の取扱い」です。
※お知らせの「持続化給付金の取扱い」をご覧ください。
■ 令和2年6月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年6月の税務トピックスは「新型コロナウイルス感染症等の拡大に伴う納税猶予の特例の創設」です。
※お知らせの「新型コロナウイルス感染症等の拡大に伴う納税猶予の特例の創設」をご覧ください。
■ 令和2年5月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年5月の税務トピックスは「5G投資促進税制の創設」です。
※お知らせの「5G投資促進税制の創設」をご覧ください。
■ 令和2年4月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年4月の税務トピックスは「企業版ふるさと納税の拡充・延長」です。
※お知らせの「企業版ふるさと納税の拡充・延長」をご覧ください。
■ 令和2年3月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年3月の税務トピックスは「所得税の準確定申告書のe-tax対応」です。
※お知らせの「所得税の準確定申告書のe-tax対応」をご覧ください。
■ 令和2年2月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年2月の税務トピックスは「所得税の確定申告書の記載事項等の簡素化」です。
※お知らせの「所得税の確定申告書の記載事項等の簡素化」をご覧ください。
■ 令和2年1月の税務トピックス [2020.07.14]
令和2年1月の税務トピックスは「先行取得をした土地等の圧縮記帳制度」です。
※お知らせの「先行取得をした土地等の圧縮記帳制度」をご覧ください。
■ 商業・サービス業・農業水産業活性化税制の適用要件等の見直し [2019.08.20]
○ 商業・サービス業・農業水産業活性化税制の適用要件等の見直し
はじめに
平成31年度税制改正では、商業・サービス業を営む中小企業者等の設備投資と経営改善を引き続き促進するという観点から、特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(いわゆる商業・サービス業・農業水産業活性化税制、以下単に「本制度」といいます。)の適用要件の見直し及び適用期限の2年延長が行われたそうですが、その内容について教えて下さい。
1 制度の概要(措法42の12の3)
中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に規定される認定経営革新等支援機関(これに準ずるものを含みます。)による「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」の交付を受けた中小企業者等で、青色申告書を提出するものが、平成25年4月1日から令和3年3月31日(改正前:平成31年3月31日)での間に、経営改善設備(単品60万円以上の建物附属設備又は単品30万円以上の器具備品で一定のもの)の取得等をして、指定事業の用に供した場合には、その取得価額の30%相当額の特別償却ができます。
また、資本金の額等が3,000万円以下の中小企業者(以下「特定中小企業者等」といいます。)については、その特別償却に代えて、その取得価額の7%相当額の特別税額控除を選択適用することができます。
ただし、本制度における特別税額控除の上限については、「中小企業投資促進税制(措法42の6)」及び「中小企業経営強化税制(措法42の12の3)」の特別税額控除における控除税額の合計で、当期の法人税額の20%が上限とされ、控除できなかった金額については1年間の繰越しができます。
2 適用要件の見直し(平成31年度税制改正)
「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」の書式が改訂され、「設備投資等の経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上(経営改善が複数年にわたる場合、年平均2%以上)となる見込みであること」を予め明記した上、認定経営革新等支援機関等の確認を受けることとの要件が追加されました。
3 売上高又は営業利益の伸び率の見通しの算定方法
「伸び率の見通し」については、客数の増加、客単価・販売数量の増加、売上原価の減少、販売費・一般管理費の減少等の観点から判断することになります。
なお、具体的な記載例は、次のとおりとされます。
① 改装工事を行って魅力的なレイアウトに変更することにより客数や客単価が○%程度上昇し●%の売上高の上昇につながる旨
② 高性能な設備を導入することにより○%程度コスト(販売費・一般管理費)が減少し●%の営業利益の上昇につながる旨
4 経営改善が複数年にわたる場合の伸び率の比較
「伸び率の比較」については、設備供用予定年度以後5年間(平成31年度供用の場合は平成31年度から令和5年度まで)のうちいずれかの年度を比較対象年度とし、比較対象年度での売上高又は営業利益の見込みと、設備供用予定年度の前年度から比較対象年度の前年度までのいずれかの年度における売上高又は営業利益の見込み(事業年度が終了している場合は実績値)を比較することとされます。
5 適用関係
上記2から4の規定は、平成31年4月1日以後に取得等をする経営改善設備について適用されます。
なお、特定中小企業者等が、平成31年4月1日前に経営改善指導助言書類の交付を受け、平成31年4月1日から令和元年9月30日までの間に経営改善指導助言書類に係る経営改善設備の取得等をする場合には、認定経営革新等支援機関等の確認をした旨の記載がある経営改善指導助言書類に係る経営改善設備とみなすこととされます。
おわりに
平成31年度税制改正では、売上高又は営業利益のいずれか一方について、年2%以上の伸びが見込まれる場合が本制度の適用要件とされます。
そこで、売上高と営業利益について、それぞれ1%以上の伸びが見込まれ、併せて2%以上と計算される場合については、本制度の適用要件を満たさないこととされますので留意して下さい。
参考文献:商業・サービス業・農業水産業活性化税制における経営改善に関する指導及び助言を行う機関(アドバイス機関)における事務について(中小企業庁財務課)
■ NISA口座保有者の出国に伴う対応 [2019.07.16]
○ NISA口座保有者の出国に伴う対応
はじめに
NISA口座保有者(一般NISA、積立NISA)が海外転勤等により一時的に出国する場合、既にNISA口座で保有している商品は課税口座に払い出されることとされます。また、帰国後においても、一旦課税口座に払い出された商品は、NISA口座に戻す(移管する)ことができませんでした。
平成31年度税制改正では、NISA口座の継続性及び利便性を向上させるため、NISA口座保有者の出国に伴う対応が見直されたそうですが、その内容について教えて下さい。
Ⅰ 改正の内容
1 継続適用届出書の提出(新措法35の14)
帰国をした後再びその非課税口座において非課税上場株式等管理契約又は非課税累積投資契約に基づく上場株式等の受入れを行わせようとする居住者等で、これらの者に係る給与等の支払をする者からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由に基因して出国をするものが、その出国の日の前日までに、その非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に、①引き続き非課税措置の適用を受けようとする旨、②帰国をした後再びその非課税口座において非課税上場株式等管理契約又は非課税累積投資契約に基づく上場株式等の受入れを行う旨、③その他の事項を記載した届出書(以下「継続適用届出書」といいます。)の提出をした場合には、その者は、引き続き居住者等に該当する者とみなして、非課税措置が適用されます。
この場合において、その継続適用届出書の提出をした者が出国をした日からその者に係る帰国届出書の提出があった日までの間に取得をした上場株式等は、その非課税口座に設けられた非課税管理勘定又は累積投資勘定に上場株式等を受け入れることができません。
2 帰国届出書を提出した場合(新措法35の14)
継続適用届出書の提出をした者が帰国をした後再び非課税口座において非課税上場株式等管理契約又は非課税累積投資契約に基づく上場株式等の受入れを行わせようとする場合には、その者は、その継続適用届出書の提出をした日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日までに、その継続適用届出書の提出をした金融商品取引業者等の営業所の長に、①帰国をした旨、②帰国をした年月日、③その非課税口座において非課税上場株式等管理契約又は非課税累積投資契約に基づく上場株式等の受入れを行わせようとする旨、④その他の事項を記載した届出書(以下「帰国届出書」といいます。)の提出をしなければなりません。
3 帰国届出書を提出しなかった場合(新措法35の14)
継続適用届出書の提出をした者がその提出をした日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日までにその帰国届出書の提出をしなかった場合には、その者は同日に非課税口座廃止届出書をその継続適用届出書の提出をした金融商品取引業者等の営業所の長に提出したものとみなされます。
4 適用除外(新措法35の14)
出国の日の属する年分の所得税につき、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例(所法60の2①」の規定の適用を受ける居住者は、継続適用届出書の提出をすることができないこととされています。
5 適用関係(平成31年度改正法附則37②)
上記1から4の改正は、平成31年4月1日以後に出国をする居住者又は恒久的施設を有する非居住者について適用されます。
おわりに
平成31年度税制改正により、海外転勤等により一時的に出国する場合においても、最長5年間引き続きNISA口座での保有が可能とされました。この場合、出国により非居住者となっている間は新たな買付ができません。
また、5年以内に帰国した場合には、帰国届出書の提出を行えばNISA口座の保有可とされますが、帰国届出書が不提出であればNISA口座が廃止され、一般口座へ移管されることとなりますので留意して下さい。
■ 租税特別措置法上のみなし大企業の範囲の見直し [2019.06.18]
○ 租税特別措置法上のみなし大企業の範囲の見直し
はじめに
平成31年度税制改正では、財務基盤の弱い中小法人を支援するという本来の制度の趣旨を鑑み、大企業の子会社等は租税特別措置法上の中小企業関連の優遇税制の対象として不相応であるとして、租税特別措置法上のみなし大法人の範囲の見直しが行われました。
そこで、本稿では、租税特別措置法上のみなし大法人の範囲の改正前及び改正後の概要と実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 租税特別措置法上のみなし大法人
1 改正前制度の概要(旧措法42の4⑧六,旧措令27の4⑫)
租税特別措置法上のみなし大法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち、次に掲げる法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人超の法人とされます。
① その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(注)の所有 に属している法人
② 上記①のほか、その発行済株式等又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法 人(注)の所有に属している法人
(注) 「大規模法人」とは、資本金の額等が1億円を超える法人又は資本等を有しない法 人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株 式会社を除きます。
2 改正の内容(新措法42の4⑧七,新措令27の4⑫一イ・ロ)
租税特別措置法上のみなし大企業の判定において、上記1の(注)書きに掲げる「大規模法人」の範囲に法人税法上のみなし大法人に掲げる判定(下記Ⅱ②③)が追加されます。
また、「大規模法人」の判定対象となる法人の発行済株式又は出資から、その有する自己の株式又は出資が除外されます。
3 適用関係(平成31年度改正措令附則16)
上記2の改正は、法人の平成31年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用され、同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、なお従前の例によります。
Ⅱ 法人税法上のみなし大法人(法法66⑥,法令139の6の2)
法人税法上のみなし大法人とは、内国法人である普通法人のうち各事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当するものとされます。
① 保険業法に規定する相互会社等
② 大法人(注)との間にその大法人による完全支配関係がある法人
③ 複数の完全支配関係がある大法人に発行済株式の全部を保有されている普通法人(上記②に掲げる法人を除きます。)
④ 受託法人
(注) 「大法人」とは、次に掲げる法人をいいます。
イ 資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人
ロ 相互会社(外国相互会社を含みます。)
ハ 受託法人
おわりに
平成29年度税制改正では、平成31年4月1日以後に開始する事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得の金額(欠損金の繰越控除制度等の適用後の法人税別表四の「所得金額又は欠損金額 (47)」の欄の金額)の合計額をその各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が年15億円を超える中小企業者(いわゆる適用除外事業者)について、法人税関係の中小企業者向けの各租税特別措置の適用が停止されることとされました(措法42の4⑧八,措令27の4⑬⑭,平成29年改正法附則1①六,附則62①)。
なお、停止される中小企業者向けの主要な税制としては、「軽減税率の特例(税率15%)(措法42の3の2①)」、「賃上げ及び設備投資税制のうち中小企業特例(措法42の12の5②)」、「中小企業投資促進税制(措法42の6)」、「商業・サービス業・農業水産業活性化税制(措法42の12の3)」及び「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67の5)」等とされますので、留意して下さい。
■ 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の拡充 [2019.05.27]
○ 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の拡充
はじめに
空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の特例制度(以下「本制度」といいます。)では、相続開始直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋が適用対象とされていました。
平成31年度税制改正では、被相続人が対象家屋から転居し、相続開始直前に老人ホーム等に入居していた場合でも、一定の要件に該当すれば本制度の適用が可能とされるとともに、適用期限の延長が行われました。
そこで本稿では、改正前及び改正後の制度概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 改正前制度の概要(旧措法35③)
相続又は遺贈(死因贈与を含みます。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした個人が、平成28年4月1日から令和元年12月31日までの間に、次に掲げる譲渡(その相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものに限るものとされ、その譲渡の対価の額が1億円を超えるものを除きます。)をした場合には、居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、居住用財産の譲渡をした場合の3,000万円特別控除を適用することができます。
① その相続の時からその相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした譲渡であること。
② その譲渡の対価の額が1億円を超えないこと。
③ その被相続人居住用家屋(一定の要件を満たすものに限ります。)の譲渡又はその被相続人居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等の譲渡であること。
④ その被相続人居住用家屋(一定の要件を満たすものに限ります。)の除却をした後におけるその敷地の用に供されていた土地等(一定の要件を満たすものに限ります。)の譲渡であること。
Ⅱ 改正の内容(新措法35③)
1 適用要件の拡充
本制度について、適用対象となる被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲に、被相続人の居住の用に供することができない一定の事由(以下「特定事由」といいます。)により相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていなかった場合(一定の要件を満たす場合に限ります。)におけるその特定事由により居住の用に供されなくなる直前にその被相続人の居住の用に供されていた家屋及びその敷地の用に供されていた土地等が追加されます。
2 特定事由
上記Ⅱにおける特定事由は、次に掲げるとおりとされます。
① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。
② 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
3 適用期限の延長
本制度の適用期限が、令和5年12月31日(改正前:令和元年12月31日)まで4年延長されます。
4 適用関係(平成31年度改正法附則34⑥)
上記Ⅱの改正は、平成31年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用されます。
Ⅲ 用語の定義(新措法35④)
「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前においてその相続又は遺贈に係る被相続人(包括遺贈を含みます。)の居住の用(特定事由によりその相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されなかった場合における特定事由により居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用を含みます。)に供されていた家屋(昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除きます。))であって、その相続の開始の直前においてその被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものに限ります。
また、「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利とされます。
おわりに
本制度における譲渡のタイミングは、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間の譲渡であって、かつ、相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡とされています。
そこで、平成25年1月2日以後に開始した相続等から本制度の適用対象とされますので留意して下さい。
■ 認定経営革新等支援機関の周知・広報について [2019.04.24]
○ 認定経営革新等支援機関の周知・広報について
はじめに
平成24年8月から創設された認定経営革新等支援機関(以下単に「認定支援機関」といいます。)の認定数は、平成30年12月末現在で32,268機関とされています。
この認定支援機関については、平成31年2月に中小企業庁経営支援課から、①電子申請システムの導入、②関与を要する施策、③個人の認定支援機関に向けた注意喚起、の3点についての周知・広報の依頼が日本税理士会連合会に寄せられました。
そこで本稿では、これら周知・広報の依頼の概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 電子申請システムの導入
1 従来の申請方法
認定支援機関の申請書は、中小企業庁のホームページから申請書様式をダウンロード し、記載例を参考にしながら必要事項を記載の上、各経済産業局に郵送することとされ ていました。
この場合、記載例の内容が多岐にわたることから、記載漏れ及び記載ミスが発生し、 修正した申請書を再提出するケースが少なくない現況とのことでした。
2 電子申請システムの導入
平成31年5月22日より「認定支援機関電子申請システム」が導入され、次に掲げるタ イムスケジュールにより完全電子化が行われる予定となっています。
① 平成31年5月から平成32年3月(新規申請・変更申請のみ対応、金融機関を除外)
ホームページからダウンロードした様式ではなく、システムから出力した申請書( 紙)に変更されます。
なお、主な特徴点は、次のとおりとされます。
(イ) アラート機能等により、申請書の入力漏れ・入力ミスを防止
(ロ) セルフチェックシートにより、必要書類の添付漏れを防止
(ハ) 認定支援機関の検索機能及び活動状況データが見える化され、各認定支援機関の 活動実績の把握・比較が可能
② 平成32年4月から平成33年3月(金融機関を除外)
システムからの申請が可能(紙での申請が不要)とされます。
なお、主な特徴点は、次のとおりとされます。
(イ) 申請書・必要書類がシステムで提出可
(ロ) 認定支援機関の活動内容の見える化を更に拡充
(ハ) 法人認証基盤等と連携し、本人確認を簡素化
③ 平成33年4月から平成34年3月(完全電子化)
金融機関を含めて、システムから全ての申請が可能とされます。
なお、主な特徴点は、共管である金融庁とのシステム連携を行い、金融機関も含め システムから全ての申請が可能とされます。
Ⅱ 関与を要する施策
税制上の優遇規定を受けるために必要とされる認定支援機関の役割は、次のとおりと されます。
① 先端設備等導入計画
事業者が市区町村に提出する認定申請書に添付する「確認書」の記載
② 法人版事業承継税制
(イ) 事業者が都道府県に提出する特例承継計画に添付する「別紙・所見等」の記載
(ロ) 認定を受けた事業者の雇用が8割を下回った場合に都道府県に提出する特例承継 計画に添付する「別紙・所見等」の記載
③ 個人版事業承継税制(平成31年度税制改正より開始)
事業者が都道府県に提出する承継計画に添付する「所見等」の記載
④ 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(平成31年度税制改正より経営改善によ り売上高又は営業利益の年2%以上の向上が見込まれることが確認できることを適用 要件に追加)
事業者が所轄税務署長に提出するアドバイスを受けた旨を明らかにする「書類」の 記載
Ⅲ 個人の認定支援機関に向けた注意喚起
認定支援機関に個人で登録されている機関では、法人になった際に一旦廃止届を提出 し、改めて法人として新規で認定申請が必要とされます。
特に、申請の電子化後では、個人から法人に認定を取り直していない場合、更新がで きなくなる可能性があります。
おわりに
中小企業庁のホームページにおいては、中小企業が各認定支援機関の活動実態を把握・比較できるように、補助金申請及び任意調査等を通じて得られた各認定支援機関のデータ及び優良な支援事案が公表されています。この公開によって、「ものづくり補助金」の採択件数、採択率等の情報も表示されるそうなので、税務以外でも認定支援機関の役割は拡充されそうですね。
■ 不動産賃貸に関する31年経過措置の特例の活用 [2019.03.29]
○ 不動産賃貸に関する31年経過措置の特例の活用
はじめに
「消費税法の一部改正に伴う(平成28年改正法3)」の規定による複数税率による改正後の消費税は、平成31年10月1日(以下「31年施行日」といいます。)から施行されます。
しかし、取引の形態及び契約の内容等によっては、8%(軽減税率)又は10%(標準税率)の新税率での消費税等の転嫁が困難な場合も想定されますので、31年施行日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、改正前の8%の旧税率(以下単に「旧税率」といいます。)が適用できる「31年経過措置の特例」の規定が設けられています(新平成28年改正法附則16)。
このうち本稿では、店舗・事務所等の課税対象となる不動産賃貸(以下単に「不動産賃貸」といいます。)に関する31年経過措置の特例の概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 適用要件
26年指定日(平成25年10月1日)から31年指定日の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した不動産賃貸に係る契約に基づき、31年施行日前から引き続きその契約に係る不動産賃貸を行っている場合において、その契約の内容が次に掲げる①及び②に掲げる要件に該当するときは、31年施行日以後に行うその不動産賃貸については、旧税率が適用されます(新平成28年度改正法附則5④,同附則16①,新平成28年度改正令附則4⑥)。
① 貸付期間及び貸付期間中の対価の額が契約で定められていること
② 事情の変更その他の理由により対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
Ⅱ 対価の額が契約で定められていること
前述したⅠ①における「対価の額が契約で定められている」とは、31年指定日の前日までの間に締結された契約においてその契約期間中の対価の総額が具体的な金額により定められている場合又は総額が計算できる具体的な方法が定められている場合とされます。
具体的には、次に掲げるような契約とされます(31年経過基本Q&A問30)。
① 契約期間中の賃貸料の総額を定めているもの
② 賃貸料の年額、月額等を、例えば、「年(月)額○○円」と定めており、これに契約期間の年数、月数等を乗じることにより、契約期間中の賃貸料の総額を計算できるもの
③ 貸付けに係る資産の数量及び賃貸料の月額単価を、例えば、「○台貸付け、1台当たり月額○○円とする。」と定めており、これに資産の数量及び契約期間の月数を乗じることにより、契約期間中の賃貸料の総額を計算できるもの
Ⅲ 事情変更等による建物の貸付けに係る対価の変更等
建物の賃貸借については、借地借家法が適用され、「借賃増減請求権(借地借家法32)」の規定により、事情変更があった場合には賃料の増減請求ができることとされています。
ただし、建物の賃貸借に係る契約において、賃貸する者がその貸付けに係る対価につき増減しない旨の特約を記載すれば、その契約は前述したⅠ②に掲げる「対価の額を変更することができる旨の定めがないこと」に該当し、31年経過措置の特例の適用要件を満たすこととされます(31年経過通達18)。
また、前述したⅠ②における「対価の額を変更することができる旨の定め」とは、本体価額の変更ができるか否かで判定されます。
おわりに
関東近郊では、東京オリンピックを目前としてホテルやオフィスビル等の建築ラッシュとなっています。これに対して、バブル期前後に建築され老築化してきた賃貸ビルでは空室が目立つようになってきています。
そこで、これら不動産賃貸の物件のうち、賃借人が長期間転居する予定のないものについては、31年指定日の前日までの間に契約内容を見直すことによって、例えば貸付期間10年で最初2年間は〇〇円、次の2年間〇〇円というように、10年間の家賃を定め、前述したⅢに掲げる賃貸人の「借賃増減請求権」がない旨を契約書に記載すれば、賃借人が負担する消費税を旧税率で固定することも可能となります。
実務上では、31年経過措置の特例の上手な活用方法を検討すべきでしょうね。
■ 消費税率引上げに伴う31年経過措置の原則 [2019.02.19]
○ 消費税率引上げに伴う31年経過措置の原則
はじめに
「消費税法の一部改正に伴う(平成28年改正法3)」の規定による複数税率による改正後の消費税(以下「31年新消費税法」といいます。)は、平成31年10月1日から施行されますので、平成31年10月1日以後に期限が到来する申告にあたっては、8%(以下「旧税率」といいます。)が適用されるものであるか、8%(軽減税率)又は10%(標準税率)(以下単に「新税率」といいます。)が適用されるものであるか、その税率の切り換え時点については慎重に区分計算する必要があります。
そこで本稿では、消費税率の切り換えに伴う31年経過措置の原則の概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 31年経過措置の原則
31年新消費税法は、平成31年10月1日(以下「31年施行日」といいます。)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等並びに31年施行日以後に国内において事業者が行う課税仕入れ等に係る消費税について適用され、平成26年4月1日(以下「26年施行日」といいます。)から31年施行日の前日までの間に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れ等に係る消費税については、なお従前の例によることとされています(新平成28年改正法附則15)。
なお、31年施行日以後に行われる軽減対象資産の譲渡等については、軽減税率が適用されます(31年経過基本Q&A問1)。
Ⅱ 31年施行日前の契約に基づく取引
31年施行日の前日までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、31年施行日以後に行われるものは、原則として、その資産の譲渡等及び課税仕入れ等について新税率が適用されます(31年経過通達2)。
Ⅲ 31年施行日の前日までに購入した在庫品
31年施行日の前日までに仕入れた商品を31年施行日以後に販売する場合には、原則として、その販売については新税率が適用されますが、商品の仕入れについては施行日の前日までに行われたものですから、課税仕入れに係る消費税額は旧税率が適用されます(31年経過通達3,31年経過基本Q&A問2)。
Ⅳ 31年施行日を含む1年間の役務提供を行う場合
役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあってはその目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあってはその約した役務の全部を完了した日とされています(消基通9-1-5)。
例えば、平成31年3月1日に、同日から1年間のコピー機械等のメンテナンス契約を締結するとともに、1年分のメンテナンス料を受領した場合には、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する日である平成32年2月28日となりますので、新税率が適用されます。ただし、契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業者が継続してその対価を収受したときに収益に計上しているときは、31年施行日の前日までに収益に計上したものについては旧税率を適用して差し支えありません(31年経過基本Q&A問6)。
Ⅴ 決算締切日の取扱い
「法人税法における決算締切日(法基通2-6-1)」の取扱いを適用している場合であっても、施行日前に行われた資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧税率が適用され、31年施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については、原則として、新税率が適用されます(新平成28年改正法附則15)。
例えば、決算締切日を毎年9月20日としている場合、平成31年9月21日から平成31年9月30日までの間に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧税率が適用されることとなります。
なお、継続的に、売上げ及び仕入れの締切日を一致させる処理をしている場合には、平成31年9月21日から平成31年9月30日までの間の売上げ及び仕入れについては、平成31年10月分の売上げ及び仕入れとして、消費税の申告をして差し支えありません(31年経過基本Q&A問5)。
おわりに
平成31年10月1日以後の取引については、原則として新税率で課税することとされています。
しかし、取引の形態及び契約の内容等によっては新税率での消費税等の転嫁が困難な場合も想定されますので、例外として31年経過措置の特例も規定されています。
次回は、この31年経過措置の特例の解説をします。
■ 仮想通貨に関する税務上の取扱い [2019.01.22]
○ 仮想通貨に関する税務上の取扱い
はじめに
近年、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどのICTのサービス及びビジネスの進展等を背景にインターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨(例:ビットコイン、イーサリアム等)の取引が急増しているようです。
こうした中、平成30年11月21日に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)、以下単に「FAQ」といいます。」が国税庁から公表されました。
そこで本稿では、公表されたFAQの概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 所得税・法人税共通関係
1.仮想通貨を売却した場合
保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その仮想通貨の売却価額から売却した仮想通貨の取得価額及び売買手数料等の経費の額の合計額を控除した金額とされます(問1)。
なお、購入した仮想通貨の取得価額は、その支払対価に購入手数料等の付随費用を加算した金額とされます(問4)。
2.仮想通貨で商品を購入した場合
保有する仮想通貨で商品を購入した場合には、保有する仮想通貨を譲渡したこととされ、その所得金額の計算は、前述した1と同様とされます(問2)。
Ⅱ 所得税関係
1.仮想通貨の所得区分
仮想通貨取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得又は雑所得に区分されます(問7)。
2.仮想通貨の取得価額の計算方法
仮想通貨の取得価額は、原則として「移動平均法」で計算することとされます。しかし、継続適用を要件に「総平均法」で計算することもできます(問11)。
3.仮想通貨の必要経費
仮想通貨の経費の額は、その取引の記録に基づいて業務の遂行上直接必要であることが明らかに区分できるものとされます。例えば、インターネット及びスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の減価償却費が想定されます(問8)。
4.年間取引報告書の送付
平成31年1月末までに国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨取引について、①年始数量、②年中購入数量及び金額、③年中売却数量及び金額、④移入数量、⑤移出数量、⑥年末数量、⑦損益合計、⑧支払手数料が記載された「年間取引報告書」が納税者(顧客)に対して送付予定とされています。
なお、仮想通貨の売却・購入が外貨で行われていた場合の年間取引報告書の各項目の記載は、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額とされます(問10)。
Ⅲ 相続税・贈与税関係
1.相続又は贈与により取得した場合
仮想通貨については、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値(決済法2⑤)」と規定されていることから、被相続人又は贈与者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されることとされます(問15)。
2.仮想通貨の評価方法
仮想通貨の評価方法は、「評価方法の定めのない財産の評価(財基通5)」の規定に基づき、次のとおりとされます(問16)。
① 活発な市場が存在する仮想通貨は、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価することとされます。
② 活発な市場が存在しない仮想通貨は、その仮想通貨の内容、性質及び取引実態等を勘案し、個別に評価(例:売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法)することとされます。
おわりに
平成30年11月21日に「仮想通貨の計算書(総平均法用)」が国税庁ホームページで公表されています。この計算書は、前述したⅡ4.の「年間取引報告書」に記載された各項目を入力(Excel)すれば簡単に所得金額を計算することができます。
なお、平成29年分以前の確定申告において売却した仮想通貨の取得価額を移動平均法で計算されていたとしても、平成30年分以後は継続して適用をすればこの計算書によって「総平均法」で計算することもできます(問11)ので、実務上活用して下さい。
■ 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し [2018.12.14]
○ 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
はじめに
年末近くになると配偶者が就業時間を調整することによって、居住者本人に配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向があり、人手不足のため営業時間の短縮を行う企業も出るなど社会問題となっていました。
そこで、平成29年度税制改正では、配偶者控除・配偶者特別控除が見直されました。改正された控除額は、最低賃金の全国平均時給1,000円、1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回る金額となるように、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限が85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)を基準とされています。
本稿では、改正された配偶者控除・配偶者特別控除の概要及びその実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 配偶者控除(所法83①)
居住者が控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合には48万円)を限度として、居住者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
Ⅱ 配偶者特別控除(所法83の2①②)
居住者が生計を一にする配偶者(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限ります。)で控除対象配偶者に該当しないもの(合計所得金額が1,000万円以下であるその居住者の配偶者に限ります。)を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円を限度として、居住者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
ただし、配偶者特別控除は、居住者の合計所得金額が1,000万円以下である場合及び生計を一にする配偶者がこの控除の適用を受けていない場合に限り適用できます。
Ⅲ 用語の意義
1 控除対象配偶者(所法2①三十三の二)
同一生計配偶者のうち、合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者とされます。
2 同一生計配偶者(所法2①三十三)
居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除きます。)のうち、合計所得金額が38万円以下である者とされます。
3 合計所得金額(所法2①三十ロ等)
次の①から⑦までに掲げる金額の合計額とされます。
① 純損失又は雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額
② 上場株式等に係る配当所得等について、申告分離課税の適用を受けることとした場合のその配当所得等の金額(上場株式に係る譲渡損失の損益通算の適用がある場合には、その適用後の金額及び上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
③ 土地・建物等の譲渡所得の金額(長期譲渡所得の金額(特別控除前)と短期譲渡所得の金額(特別控除前))
④ 一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除又は特定中小会社が発行した株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑤ 先物取引に係る雑所得等の金額(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑥ 退職所得金額
⑦ 山林所得金額
Ⅳ 適用関係(平成29年度改正法附則6)
上記Ⅰ及びⅡの改正は、平成30年分以後の所得税から適用されます。
おわりに
平成30年分以後の年末調整から配偶者控除又は配偶者特別控除は、居住者から提出された「給与所得者の配偶者控除等申告書」に基づいて行うこととされます。年末調整後、その年の12月31日までの間に配偶者の合計所得金額に異動が生じた場合には、翌年1月の「給与所得者の源泉徴収票」を交付する時までに年末調整の再調整を行うことができます。また、年末調整の再調整によらず従業員が確定申告によって対応することも可能となります。
特に有価証券を保有している配偶者においては、①上場株式等の配当等で申告不要を選択したもの、②非上場株式等の配当等で年10万円未満のものは配偶者の合計所得金額の算定上カウントしませんので留意して下さい。
■ QRコードを利用したコンビニ納付 [2018.11.20]
○ QRコードを利用したコンビニ納付
はじめに
国税を納付しようとする者は、納付金額が30万円以下で税務署が作成(郵送)したバーコード付納付書に基づき納付しようとする場合には、国税庁長官が指定する納付受託者(コンビニエンスストア)に納付を委託(以下単に「コンビニ納付」といいます。)することができることとされています(国通法34の3①)。
ただし、現行の国税のコンビニ納付については、自宅及び税務署以外の会場等で電子申告を行う場合には、改めて税務署からバーコード付納付書を取り寄せてコンビニ納付を行う必要がありました。
そこで、平成30年度税制改正では、納税者の利便性の向上を図る観点から、コンビニ納付の利用手段が拡充され、二次元コード(いわゆるQRコード)を利用したコンビニ納付が可能となりました。
本稿では、拡充されたQRコードを利用したコンビニ納付制度の概要及びその実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 改正の内容(国通規2②二)
コンビニ納付を利用できる納付書の範囲に、コンビニにより作成された納付書が追加されます。具体的には、コンビニ納付を行おうとする納税者が、自宅等において国税庁ホームページを利用して納付に必要な情報をQRコード化し、コンビニの端末機で読み取り納付書を出力することによって、コンビニ納付ができることとされます。
※お知らせの「QRコードを利用したコンビニ納付」をご参照ください。
≪利用方法≫
①② 自宅等で作成・出力した「QRコード」(PDFファイル)をコンビニ店舗に持参
③ いわゆるキオスク端末(「Loppi」や「Famiポート」)に読み取らせることによりバーコード(納付書)が出力
④ バーコード(納付書)によりレジで納付
≪利用可能コンビニ≫
ローソン、ナチュラルローソン、ミニストップ(いずれも「Loppi」端末設置店舗のみ)ファミリーマート(「Famiポート」端末設置店舗のみ)等
Ⅱ 適用関係(平成30年度改正国通規附則③)
上記Ⅰの改正は、平成31年1月4日以後に納付の委託を行う国税について適用され、同日前に委託を行う国税については、なお従前のとおりとされます。
おわりに
QRコードを利用したコンビニ納付による納税可能な税金は、あくまでも30万円以下の国税とされます。
「開いてて良かった」のキャッチフレーズで全国各地で店舗展開をしているコンビニ納付の利用手段の拡充は、納税者にとっては便利でしょう。しかし、早朝・深夜の時間帯などのセキュリティ面から考えるとコンビニの経営者にとっては頭の痛い問題でしょうね。
■ 特例経営承継受贈者の適用要件 [2018.10.22]
○ 特例経営承継受贈者の適用要件
はじめに
中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
本稿では、本特例の適用対象者である特例経営承継受贈者(以下単に「特例受贈者」といいます。)の適用要件及びその実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 特例受贈者の定義
「特例受贈者」とは、特例贈与者から本特例の規定の適用に係る贈与により特例認定贈与承継会社(以下単に「特例会社」といいます。)の非上場株式等の取得をした後継者で、次に掲げる要件の全てを満たす者(その者が2人又は3人以上ある場合には、その特例会社が定めた2人又は3人までに限ります。)とされます(措法70の7の5②六)。
① 贈与の日において20歳以上であること。
② 贈与の時において、特例会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。)を有していること。
③ 贈与の時において、後継者及び後継者の親族などで総株主等議決権数の50%超の議決権数を保有すること。
④ 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める要件を満たしていること。
イ後継者が1人の場合…同族関係者の中で筆頭株主であること。
ロ後継者が2人又は3人の場合…各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で上位2位以内(後継者2人の場合)又は3位以内(後継者3人の場合)であること。
⑤ 贈与の時からその贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限(その提出期限前に後継者が死亡した場合には、その死亡の日)まで取得した株式等を継続して保有していること。
⑥ 贈与直前において3年以上役員(会社法上の役員及び業務を執行する社員を含みます。)であること(措規23の12の2⑧,会社法329①)。
⑦ 特例会社の株式等について、一般措置(措法70の7①,同法70の7の2①)の適用を受けていないこと。
⑧ 特例承継計画に記載された後継者であること(措規23の12の2⑨)。
Ⅱ 相続時精算課税制度の適用範囲の拡大
平成30年度税制改正前では、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫(直系卑属)への贈与が相続時精算課税制度の対象とされていました。
平成30年度税制改正では、改正前の制度に加えて、特例対象受贈非上場株式等を贈与により取得した特例受贈者が特例贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日において20歳以上である者に限ります。)であり、かつ、その特例贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることとされます(措法70の2の7①)。
この場合における「推定相続人」とは、その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年1月1日において20歳以上である者とされます(措通70の2の7-2)。
なお、この改正は、平成30年1月1日以後に贈与により取得する株式等に係る贈与税について適用されます(平成30年度改正法附則118⑤)
おわりに
前述したⅠ④イ又はロのいずれの場合に該当するかは、同一の特例贈与者から同一の特例会社の株式等を「贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5①)」の規定の適用に係る贈与により取得した個人の数によることとされます(措通70の7の5-10(注)1)。
また、前述したⅠ④ロに掲げる要件の判定は、その贈与のうち最後に行われた贈与直後のいずれの特例受贈者の有する株式等が特例贈与者の有する特例会社の株式等の数等を上回ること(同率の場合は不可)とされていますので留意して下さい。
■ 特例贈与者の適用要件 [2018.09.25]
○ 特例贈与者の適用要件
はじめに
中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
本稿では、本特例の適用対象者である特例贈与者の適用要件及びその実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 特例贈与者の定義
「特例贈与者」とは、特例認定贈与承継会社(以下単に「特例会社」といいます。)の非上場株式等(議決権に制限のないものに限ります。以下同じ)を有していた個人として次の1又は2に定める者(特例会社の非上場株式等について既に本特例の適用に係る贈与をしているものを除きます。)とされます(措法70の7の5①,措令40の8の5①)。
1 贈与の直前において、既に本特例の適用を受けている者がいる場合…贈与時において、特例会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。以下同じ)を有していないこと。
2 上記1以外の場合…次に掲げる要件の全てを満たすこと。
① 贈与の時前において、特例会社の代表権を有していた個人
② 贈与の直前において、贈与者及び贈与者の親族などで総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、特例経営承継受贈者(以下単に「特例受贈者」といいます。)を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
③ 贈与時において、特例会社の代表権を有していないこと
④ 特例承継計画に記載された個人であること
Ⅱ 贈与株数要件
次の1又は2の区分に応じて、それぞれに掲げる贈与株数要件を満たすものとされます(措法70の7の5①一・二)。この場合において、その年分の贈与税の申告書に本特例の適用を受ける旨の記載があるものが対象とされます(措通70の7の5-3(注)6)。
1 特例受贈者が1人のケース
① 贈与直前において、特例贈与者が有していた特例会社の非上場株式等の数等が発行済株式等の総数等の2/3から特例受贈者が有していた株数等を控除した残数等以上の場合…控除した残数等以上の数等に相当する非上場株式等の贈与
② 上記①以外の場合…特例贈与者が贈与直前に有していた非上場株式等の全ての贈与
2 特例受贈者が2人又は3人のケース(次の①及び②の全ての要件を満たす場合)
① 贈与後におけるいずれの特例受贈者の有する特例会社の非上場株式等の数等が発行済株式等の総数等の10%以上となる贈与
② いずれの特例受贈者の有する株数等が特例贈与者の有する特例会社の非上場株式等の数等を上回る贈与(特例贈与者と特例受贈者が同率の場合は不可)
Ⅲ 贈与の範囲
平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の最初の本特例の適用に係る贈与及びその贈与に係る特例経営贈与承継期間の末日までの間に贈与税の申告書の提出期限が到来する追加贈与に限られます(措法70の7の5①)。
そこで、最初の贈与者は、①代表権を有していた者、②50%超の株主グループに所属している者、③贈与直前に筆頭株主である者(特例受贈者を除きます。)④特例承継計画に記載された者で前述したⅡに掲げる贈与株数要件を満たす贈与とされます。
おわりに
特例贈与者における対象となる贈与は、原則として1回限りとされます。ただし、例外として、特例受贈者が2人又は3人以上ある場合において、同一年中に、これらの特例受贈者に対して行った贈与は前述したⅠに掲げる「既に本特例の適用に係る贈与をしているもの」に含まれないこととされます(措通70の7の5-2(注))。
また、特例贈与をした者は、特例被相続人になることができませんので留意して下さい(円滑化規6①十二ト(7))。
■ 特例承継計画の作成上の留意点 [2018.08.21]
○ 特例承継計画の作成上の留意点
はじめに
中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度が創設されました。
本稿では、事業承継税制の特例の適用を受ける場合に必要となる特例承継計画の作成上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 定義(円滑化規16①)
「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、その特例認定承継会社の後継者及び承継時までの経営見通し等が記載されたものとされます。
Ⅱ 確認申請書の提出(措法70の7の5②)
平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に「特例承継計画の確認申請書(様式第21)」による申請書に、その申請書の写し1通及び登記事項証明書(確認申請日の前3月以内に作成されたものに限り、特例代表者が確認申請日においてその中小企業者の代表者でない場合にあってはその特例代表者が代表者であった旨の記載のある登記事項証明書を含みます。)を添付して、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁に提出します。
Ⅲ 記載事項
特例承継計画の主な記載事項は、次に掲げるとおりとされます。
① 会社:主たる事業内容、資本金額等の総額、常時使用する従業員の数
② 特例代表者:申請者の氏名、代表権の有無(「無」の場合は、退任した年月日)
③ 特例後継者:株式を承継する予定の後継者の氏名(最大3人まで)
④ 特例代表者が有する株式等を特例後継者が取得するまでの期間における経営の計画:株式を承継する時期、経営上の課題、その課題への対応
⑤ 特例後継者が株式等を承継した後5年間の経営計画:各年の取組内容、期待できる効果
⑥ 認定経営革新等支援機関による所見等:事業承継を行う時期、準備状況、事業承継時までの経営上の課題とその対処方針、事業承継後の事業計画の実現性などの指導・助言の内容
Ⅳ 都道府県知事の確認(円滑化規17④)
都道府県知事は、上記Ⅱの申請を受けた場合において、その確認をしたときは「施行規則第17条4項の規定による確認書(様式第22)」を申請者である中小企業者に対して交付します。また、その確認をしない旨の決定をしたときは「施行規則第17条4項の規定による確認をしない旨の通知書(様式第23)」により申請者である中小企業者に対して通知します。
Ⅴ 特例承継計画の認定(円滑化法12①,円滑化規7⑥)
特例承継計画の認定を受けようとする特例認定贈与承継会社は、その認定に係る贈与の日の属する年の翌年の1月15日までに、「第一種特例贈与認定中小企業者に係る認定申請書(様式第7の3)」による申請書に、その申請書の写し1通及び上記Ⅳに掲げる確認書(様式第22)等の一定の書類を添付して、都道府県知事に提出することとされます。
おわりに
特例承継計画に特例後継者として氏名を記載された者でなければ、事業承継税制の特例の認定を受けることはできません。また、特例承継計画を提出した場合であっても、特例後継者に株式の承継を行わなくても罰則規定はありませんので、実務上は期日までに特例承継計画の提出をしておくべきでしょう。
なお、特例承継計画の確認を受けた後に、計画の内容に変更があった場合は、変更申請書(様式第24)を都道府県に提出し確認を受けることができます。この変更申請書には、変更事項を反映した計画を記載し、再度認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けることが必要とされます(円滑化規17①一,同規18①⑤)。
ただし、既に特例認定贈与承継会社の株式の贈与を受けた特例後継者については、変更対象者とされませんので留意して下さい。
■ 軽減税率対策補助金 [2018.07.20]
○ 軽減税率対策補助金
はじめに
平成31年10月1日から消費税の税率が10%に引き上げられ、軽減税率8%も同時に導入されます。軽減税率は、「酒類及び外食を除く飲食料品」及び定期購読契約が締結された週2回以上発行される「新聞」が対象とされます。
この消費税率の複数化の開始に伴い、対応が必要となる中小企業・小規模事業者等に対して、複数税率対応レジの導入及び受発注システムの改修等に要する経費の一部を補助することにより、導入等の準備が円滑に進むよう支援する、いわゆる軽減税率対策補助金が創設されています。この補助金には①A型(複数税率対応レジの導入等支援)、②B型(受発注システムの改修等支援)の2つの申請類型があります。
そこで、本稿では、複数税率の導入前に検討しておきたい軽減税率対策補助金について解説することとします。
Ⅰ A型
1 制度の概要
レジの種類及び複数税率への対応方法(導入・改修)によって、次の4種類の申請方法に分かれています。
① A-1型(レジ・導入型):複数税率対応の機能を有するPOS機能のないレジを対象とし、その導入費用が補助対象。
② A-2型(レジ・改修型):複数税率非対応のレジを対応レジに改修する場合の費用が補助対象。
③ A-3型(モバイルPOSレジシステム):複数税率に対応した継続的レジ機器サービスをタブレット、PC、スマートフォンを用いて利用し、レシートプリンタを含む付属機能を組み合わせてレジとして新たに導入する費用が補助対象。
④ A-4型(POSレジシステム):POSレジシステムを複数税率に対応するように改修又は導入する場合の費用が補助対象。
2 実務上の留意点
補助額はレジ1台当たり20万円(複数台数申請等については1事業者当たり200万円)が上限とされています。
① 基本的には、補助率は2/3とされていますが、1台のみの機器導入を行う場合で、かつ、導入費用が3万円未満の機器については3/4、タブレット等の汎用端末については1/2と補助率が異なることとされています。
② レジ本体の他、レジ機能に直結する付属機器等(バーコードリーダー・キャッシュドロア・クレジットカード決済端末・電子マネーリーダー・カスタマーディスプレイ・レシートプリンタ・ルーター・サーバー)も合わせて補助対象とされます。
Ⅱ B型
1 制度の概要
指定事業者に改修等を依頼するか、事業者自身で行うかで、次の2種類の申請方法に分かれています。
① B-1型(受発注システム・指定事業者改修型):システムベンダー等に発注して、受発注システムを改修・入替する場合の費用が補助対象。
② B-2型(受発注システム・自己導入型):自らパッケージ製品・サービスを購入・導入して受発注システムを改修・入替する場合の費用が補助対象。
2 実務上の留意点
補助上限額は、発注システム側・受注システム側の改修・入替ごとに異なります。
① 小売事業者等の発注システムの場合の補助上限額は1,000万円、卸売事業者等の受注システムの補助上限額は150万円で、両方の改修・入替が必要な場合の補助上限額は1,000万円とされます。
② 補助率は、改修・入替に係る費用の2/3とされています。
③ 補助対象範囲外の機能を含むパッケージ製品・サービスについては、初期購入費用の1/2を補助対象経費とし、これに補助率を乗じるものとされます。
Ⅲ 申請受付期限
A型及びB-2型は、平成31年12月16日までに申請(事後申請)することとされます。
また、B-1型は、平成31年9月30日までに改修・入替作業を完了することを前提に平成31年6月28日までに交付申請を行うこととされ、完了報告書は平成31年12月16日までに提出することとされます。
≪中小企業庁ホームページ参照(http://kzt-hojo.jp)≫
■ 相続税の申告書の添付書類の拡充 [2018.06.19]
○ 相続税の申告書の添付書類の拡充
はじめに
平成30年度税制改正では、納税義務者の相続税の申告書の添付書類における行政手続きコストに配慮する観点から、戸籍謄本を複写したものが添付可能とされるとともに、法定相続情報証明制度が活用できることとなりました。
そこで、本稿では、拡充された相続税の申告書の添付書類の制度の概要と実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 改正前制度の概要(相規16③)
相続税の申告書に添付すべき書類の範囲は、①相続の開始の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの、②被相続人に係る相続時精算課税適用者がある場合には、相続の開始の日以後に作成されたその被相続人の戸籍の附票の写しとされます。
Ⅱ 添付書類の拡充(新相規16③一)
相続税の申告書の添付書類として提出すべき書類の範囲に、①戸籍謄本を複写したもの、②法定相続情報一覧図の写し(複写したものを含み、図形式で記載されたもののうち実子又は養子の別が記載されたもの(被相続人に養子がある場合には養子の戸籍謄本又は抄本が必要とされます)に限ります。)が追加されます。
※お知らせの「相続税の申告書の添付書類の拡充」をご参照ください。
(注)酒類等の製造業又は販売業を相続しようとする者が提出する相続申告書には、戸籍抄本を添付する必要があります。
Ⅲ 適用関係(平成30年度改正規附則3)
前述したⅡの改正は、平成30年4月1日以後に提出する申告書(これらの申告に係る期限後申告書を含みます。)について適用され、同日前にこれらの規定により提出した申告書については、なお従前の例によります。
おわりに
平成29年5月29日から全国の登記所(法務局)において作成できることとなった法定相続情報証明制度の法定相続情報一覧図では、相続人に関する情報として被相続人との続柄を記載する必要があります。平成30年4月1日から、この続柄について相続人が被相続人の子又は配偶者である場合、原則として戸籍に記載される続柄(例えば、子であれば「長男」、「長女」、「養子」など)が記載できることとされます。そこで、被相続人との続柄について、戸籍に記載される続柄を記載することによって、相続税の申告書の添付書類に法定相続情報一覧図の写しが利用できることとされます。
なお、申出人の選択により、続柄について子であれば「子」、配偶者であれば「配偶者」と記載することもできます。この場合には、相続税の申告書の添付書類に法定相続情報一覧図の写しが利用できませんので留意して下さい。
■ 特定一般社団法人等に対する相続税の課税の創設 [2018.05.22]
○ 特定一般社団法人等に対する相続税の課税の創設
はじめに
一般社団法人等は、登記だけで簡単に設立でき、持ち分が存在しないことから、一族が支配する一般社団法人等に財産を移転した後、理事の交代によって子及び孫に支配権を移転し、その財産の承継を行ったとしても相続税が課税されませんでした。
平成30年度税制改正では、適正・公平な課税を実現し、税制に対する国民の信頼を確保する観点から、一般社団法人等に財産を移転することによる課税逃れを防止するために同族関係者が理事の過半を占める、いわゆる特定一般社団法人に対して相続税が課税(以下「本特例」といいます。)されることとなりました。
そこで、本稿では、本特例の概要と実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 制度の概要(新相法66の2①,新相令34④)
一般社団法人等(公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人又は特定目的会社その他一定のものを除きま。)の理事である者(一般社団法人等の理事でなくなった日から5年を経過していない者を含みます。)が死亡した場合において、その一般社団法人等が特定一般社団法人等に該当するときは、その特定一般社団法人等が、その死亡した者(以下「被相続人」といいます。)の相続開始の時におけるその特定一般社団法人等の純資産額をその時における同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額に相当する金額をその被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税が課税されます。
Ⅱ 用語の定義
1 特定一般社団法人等の定義(新相法66の2②三)
次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等とされます。
① 相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
② 相続開始前5年以内において、同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
2 同族理事の定義(新相法66の2②二,新相令34③)
一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他その被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)とされます。
3 純資産額の算定方法(新相令34①②)
特定一般社団法人等の純資産額の算定は、①に掲げる金額から②に掲げる金額を控除した残額とされます。
① 被相続人の相続開始の時において特定一般社団法人等が有する財産(信託の受託者として有するもの及びその被相続人から遺贈により取得したものを除きます。)の価額(注1)の合計額(注1)財産の価額は、被相続人の相続開始の時における時価とされます。
② 次に掲げる金額(注2)の合計額
イ.特定一般社団法人等が有する債務であって被相続人の相続開始の際に現に存するもの(確実と認められるものに限るものとし、信託の受託者として有するものを除きます。)の金額
ロ.特定一般社団法人等に課される国税又は地方税であって被相続人の相続開始以前に納税義務が成立したもの(その相続の開始以前に納付すべき税額が確定したもの及びその被相続人の死亡につき課される相続税を除きます。)の額
ハ.被相続人の死亡により相続人その他の者がその被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した給与の額
ニ.被相続人の相続開始の時における特定一般社団法人等の基金の額
(注2)債務の金額は、その時の現況とされます。
Ⅲ 適用関係(平成30年度改正法附則43①⑤⑥)
前述したⅠの改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用されます。
ただし、平成30年3月31日以前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後のその一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用され、平成30年3月31日以前の期間は前述したⅡ1②の2分の1を超える期間に該当しないものとされます。
おわりに
本特例により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について既にその特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額が控除できることとされます(新相法66の2③,新相令34⑩)。
■ 認定先端設備等に係る償却資産税の特例措置の創設 [2018.04.13]
○ 認定先端設備等に係る償却資産税の特例措置の創設
はじめに
中小企業の業績は徐々に回復傾向にあるようですが、労働生産性は伸び悩んでおり、大企業との差も拡大しています。また、中小企業が所有している設備は老朽化が進んでおり、生産性向上に向けた足枷となっています。
そこで、平成30年度税制改正では、地域の中小企業者等による設備投資の促進に向けて「生産性向上特別措置法」の規定により、市町村が主体的に作成した計画に基づき行われた設備投資に対して、償却資産税が軽減される特例措置(いわゆる認定先端設備等に係る償却資産税の特例措置、以下「本特例」といいます。)が創設されました。
そこで、本稿では、本特例の概要と実務上の留意点について解説することとします。
Ⅰ 制度の概要(平成30年度地方税附則㊼)
中小企業者等が、生産性向上特別措置法の施行の日から平成33年3月31日までの期間(以下「適用期間」といいます。)内において、同法に規定する市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた認定先端設備等導入計画に従って取得された機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限ります。)、器具備品及び建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除きます)(以下「機械装置等」といいます。)に対して課される固定資産税の課税標準は、その機械装置等に対して新たに課されることとなった年度から3年度分の固定資産税に限り、その機械装置等に係る固定資産税の課税標準となるべき価格にゼロ以上2分の1以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額とされます。
Ⅱ 用語の定義
1 先端設備等(平成30年度地方税附則㊼、生特法36①)
「先端設備等」とは、商品の生産若しくは販売又は役務の提供の用に供する施設、設備、装置又はプログラムであって、次に掲げる要件を満たすもの(工業会等が証明書を発行)とされます。
①販売が開始された時期に係る要件
それぞれの指定設備の属する型式区分ごとに販売が開始された時期に係る要件に該当するものであること。
イ.機械装置:10年以内
ロ.工具:5年以内
ハ.器具備品:6年以内
ニ.建物附属設備:14年以内
②生産性向上要件
旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するものであること。
2 労働生産性
労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)/労働投入量(注)
(注)労働者数又は労働者数に一人当たり年間就業時間を乗じたものとされます。
3 中小企業者等(措法42の4⑧六)
「中小企業者等」とは、中小企業者又は農業協同組合等で青色申告書を提出しているものとされます。このうち、「中小企業者」とは、資本金の額等が1億円以下の法人のうち、次に掲げる法人以外の法人又は資本等を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とされます。
①その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(注)の所有に属している法人
②上記①のほか、その発行済株式等又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人(注)の所有に属している法人
(注)大規模法人とは、資本金の額等が1億円を超える法人又は資本等を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。
Ⅲ 先端設備等の取得価額要件(新地方令11㊺)
前述したⅠの本特例の適用を受ける場合には、「一定の規模以上の先端設備等」を取得等して、国内にあるその法人の事業の用に供する必要があります。
この場合における取得価額要件は、次に掲げるとおりとされます。
①機械装置:1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
②工具・器具及び備品:1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
③建物附属設備:一の取得価額が60万円以上のもの
おわりに
本特例は、国の同意を受けた市区町村から先端技術等導入計画の認定を受ける必要がありますが、その認定に際しては認定経営革新等支援機関による事前確認が義務付けられていますので留意して下さい。
また、経営力向上設備等に係る償却資産税の特例制度は、平成31年3月31日の適用期限の到来をもって廃止されます(平成30年度地方税附則15)。
■ 中小企業者等における投資の促進に係る税制の創設 [2018.03.19]
○ 中小企業者等における投資の促進に係る税制の創設
はじめに
わが国の企業収益は過去最高を更新し続け、バブル期を超えて過去最高水準となっております。また、企業の現預金等の保有残高も2011年以降増加し続け、228.5兆円となっております。
平成30年度税制改正では、企業収益及び預貯金等の保有残高を生産性向上のための設備投資や人材投資に振り向け、持続的な賃上げを促す観点から所得拡大促進税制が大幅に改組されることとなりました。
このうち、本稿では、改組・創設された中小企業者等における投資の促進に係る税制の概要について解説します。
Ⅰ 適用要件(新措法42の12の5②)
青色申告書を提出する中小企業者等(中小企業者のうち適用除外事業者に該当するものを除きます。)が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度(「大企業における賃上げ及び投資の促進に係る税制(新措法42の15の5①)」の規定の適用を受ける事業年度、設立事業年度、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度は対象外とされます。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、賃上げ率が1.5%以上であるとき(中小企業者等の雇用者給与等支給額がその比較雇用者給与等支給額以下である場合を除きます。)は、雇用者給与等支給増加額の15%相当額の特別税額控除ができることとされます。
ただし、特別控除税額は、当期の法人税額の20%相当額が上限とされます。
Ⅱ 特別税額控除率の上乗せ措置(新措法42の12の5②カッコ書き)
上記Ⅰの規程の適用を受ける場合において、次に掲げる①及び②のすべての要件を満たすときは、上乗せ措置として雇用者給与等支給増加額の25%相当額の特別税額控除ができることとされます。
① 賃上げ率が2.5%以上であること。
② 次のいずれかの要件を満たすこと。
イ)教育訓練費の額から中小企業比較教育訓練費の額を控除した金額のその中小企業比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であること。
ロ)その中小企業者等が、その事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものであり、その認定に係る経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされたものであること。
Ⅲ 用語の意義(新措法42の12の5③)
1 雇用者給与等支給額
法人の各事業年度(以下「適用年度」といいます。)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支給を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)とされます。
2 比較雇用者給与等支給額
適用年度開始の日の前日を含む事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額とされます。
3 雇用者給与等支給増加額
雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額とされます。
4 継続雇用者
当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとされます。
5 賃上げ率
継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合とされます。
6 教育訓練費の額
国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ又は向上させるための費用で、その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものとされます。)を自ら行う場合の外部講師謝金・外部施設等使用料等の費用、他の者に委託する場合の委託費及び他の者が行う教育訓練等に参加する場合の参加費等とされます。
7 中小企業比較教育訓練費の額
前期の教育訓練費の額とされます。
Ⅳ 適用関係(平成30年改正法附則86)
前述したⅠ及びⅡの改正は、法人の平成30年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用され、同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、なお従前の例によります。
おわりに
平成30年度税制改正では、基準年度(平成24年度)との比較が撤廃され、雇用者給与等支給増加額の計算が前事業年度との比較とされます。
また、賃上げ率の計算も一人当たりの「平均給与」から継続雇用者の「給与の総額」をベースとしたものとされますので、従来よりその計算が少し楽になるでしょうね。
■ 個人事業者の所得拡大促進税制の活用 [2018.02.21]
○ 個人事業者の所得拡大促進税制の活用
はじめに
税理士にとって最も多忙な時期である個人の確定申告が始まります。税理士事務所においても、確定申告終了後に頑張った事務所職員に対して特別ボーナスを支給するケースも多いようです。
平成29年度税制改正では、個人事業者の収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の「好循環」を強化するため、所得拡大促進税制における個人事業者に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う個人への支援が強化されました。
そこで、本稿では、個人事業者が所得拡大促進税制を適用する場合における留意点について解説します。
Ⅰ 制度の概要(措法10の5の4①)
青色申告書を提出する個人が、平成26年から平成30年までの各年(事業を廃止した日の属する年を除きます。)における雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上である場合において、次に掲げる適用要件のすべてを満たすときには、その年分の総所得金額に係る所得税から雇用者給与等支給増加額の10%相当額の特別税額控除ができます。
ただし、特別税額控除額については、その年分の調整前事業所得税額の10%相当額(中小事業者については、20%相当額)が限度とされます。
① 増加促進割合について適用年が平成29年である場合には4%(中小事業者:3%)及び平成30年である場合には5%(中小事業者:3%)以上であること。
② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること。
③ 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を上回ること。
Ⅱ 平成29年度税制改正
(1) 平均給与等支給額の増加要件の見直し(措法10の5の4①二ロ,措令5の6の4⑯)
中小事業者以外の個人について、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えることとの要件が、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額(以下「平均給与等支給増加額」といいます。)のその比較平均給与等支給額に対する割合(いわゆる「賃上げ率」)が2%以上であることとの要件に見直されます。
また、中小事業者以外の個人の平均給与等支給額に係る要件につき比較平均給与等支給額が零である場合には、その要件を満たさないこととされます。
(2) 特別税額控除率の上乗せ(措法10の5の4①)
特別税額控除額について、賃上げ率が2%以上である場合には、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の2%(中小事業者:12%)との合計額とされます。
(3) 適用関係(平成29年改正法附則48)
上記(1)及び(2)の改正は、個人の平成30年分以後の所得税について適用され、平成29年分以前所得税については、なお従前の例によります。
Ⅲ 用語の定義
上記Ⅰ及びⅡにおける主な用語の定義は、次のとおりとされます。
① 雇用者給与等支給増加額
雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額(平成25年分の給与等支給額とされます。)を控除した金額とされます。
② 雇用者給与等支給額
適用年の年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される国内雇用者(個人の使用人(特殊関係者を除きます。)のうち個人の有する国内の事業所に勤務する雇用者として労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者とされます。)に対する給与等支給額(その給与等に充てるため他の者から支給を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)とされます。
③ 比較雇用者給与等支給額
適用年の前年分の雇用者給与等支給額(適用年の前年において事業を開始した場合(相続により事業を承継した場合を除きます。)には、その給与等支給額に12を乗じて適用年の前年において事業を営んでいた期間の月数で除して計算した金額)とされます。
④ 中小事業者の範囲(措法10⑧五,措令5の3⑨)
「中小事業者」とは、中小事業者に該当する個人で青色申告書を提出しているものとされます。このうち、「中小事業者」とは、常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人とされます。
おわりに
公表された平成30年度税制改正大綱(平成29年12月22日閣議決定)においては、基準年(平成25年分)が撤廃され、雇用者給与等支給増加額の計算が前年との比較とされています。また、賃上げ率1.5%以上を実施した中小事業者では、控除率が15%とされ、大事業者並みの高い賃上げ率2.5%以上を実施するとともに人材投資又は生産性向上の実施が証明された場合には控除率が25%とされています。
これら税制改正を考慮すると税理士事務所においても事務所職員の昇給及び特別ボーナスの支給も工夫する必要がありそうですね。
■ 医療費控除は領収書の添付が不要に! [2018.01.19]
○ 医療費控除は領収書の添付が不要に!
はじめに
平成29年度税制改正では、平成30年1月1日以後に平成29年分の所得税の確定申告で医療費控除(セルフメディケーション税制による特例は除きます。)の適用を受ける場合には、原則として医療費の領収書の提出が不要とされ、医療費の明細書を提出することとされます。
また、社会保険診療分の医療費については、医療保険者から交付を受けた医療費通知(いわゆる健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」など)を添付すれば、医療費の明細の記載も省略することが可能とされます。
そこで、本稿では、改正された医療費控除を適用する場合における留意点について解説します。
Ⅰ 添付書類等の見直し
医療費控除の適用を受ける者は、「医療費控除の明細書」及び医療保険者等の「医療費通知」を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととされます(所法120④)。
この場合において、税務署長は、その適用を受ける者に対し、確定申告期限等から5年間、その明細書等に係る医療費の領収書(「確定申告書の提出の際に、医療保険者から交付を受けた医療費通知を医療費の明細書として添付した場合におけるその医療費通知に係る医療費の領収書」及び「e-taxを使用して確定申告を行った際に、医療保険者から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを医療費の明細書として送信した場合におけるその医療費通知情報に係る医療費の領収書」に該当するものを除きます。)の提示又は提出を求めることができます(所法120⑤)。
Ⅱ 医療費の明細書の意義
「医療費の明細書」とは、所得税の確定申告書に記載された医療費控除を受ける金額の計算の基礎となる控除適用医療費の額等の記載のある明細書とされます(所法120④一)。
また、控除適用医療費の額等の記載のある明細書(医療保険者等の医療費通知が確定申告書に添付された場合におけるその書類に記載された控除適用医療費の額等に係るものを除きます。)には、次に掲げる事項を記載することとされます(所規47の2⑧)
①医療を受けた者の氏名
②病院・薬局などの支払先の名称又は氏名
③医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医薬品の購入、その他の医療に区分されたものにチェックマークを記載)
④支払った医療費の額
⑤④のうち生命保険や社会保険などで補填される金額
Ⅲ 医療費通知の添付
医療保険者等の医療費通知の交付を受けた者は、①各月に交付を受けた「医療保険者等の医療費通知」に記載された自己が負担した社会保険診療分の医療費の合計額と②「医療保険者等の医療費通知に係る医療費以外(いわゆる自由診療分など)」の医療費について医療費控除適用者自らが作成した控除適用医療費の額等の合計額を医療費控除の明細書に併せて記載することとされます。
ただし、医療保険者等の医療費通知に記載された医療費の額は、実際に支払った金額と異なる場合がありますので、領収書等で確認し、修正する必要があります。
おわりに
前述したⅠからⅢの改正は、平成30年1月1日以後に平成29年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用され、同日前に確定申告書を提出した場合又は同日以後に平成28年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については、なお従前の例によることとされます(平成29年改正法附則7①)。
また、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの各年分の所得税に係る確定申告に限り、従来どおり、医療費の領収書の添付又は提示による医療費控除の適用も可能とされています。この場合において、その添付又は提示をした領収書に係る医療費については、税務署長の求めの対象外とされます(平成29年改正法附則7②)。
なお、この経過措置は、一部の医療費についてのみ選択適用することもできますので、社会保険診療分などの医療費については「医療保険者等の医療費通知書」を添付することにより簡素な手続を利用し、それ以外の自費診療分などの医療費については従来どおり医療費に係る領収書を添付することも可能とされます。
■ 個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱い [2017.12.18]
○ 個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱い
はじめに
法人税では、固定資産等を購入した際に支出する登録免許税、不動産取得税及び自動車取得税等の租税公課は、損金算入の選択が企業経理に委ねられています(法基通7-3-3の2)。しかし、所得税では、個人の帳簿への記帳等が不十分であることから、これら租税公課の取扱いが業務用資産と非業務用資産で異なります。
そこで、本稿は、個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱いについて解説します。
Ⅰ 業務用資産の場合
個人事業者が支出した業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除きます。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等の租税公課は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所基通37-5)。
なお、「業務の用に供される資産」には、贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」といいます。)により取得した資産を含むものとされます。
Ⅱ 非業務用資産の場合
個人が支出した業務の用に供される資産以外の資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は、その固定資産の取得費に算入されます(所基通38-9)。
Ⅲ 減価償却資産の場合
個人が支出した減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)をその資産の取得価額に算入するか否かについては、次のとおりとされます(所基通49-3)。
なお、減価償却資産には、贈与等により取得した減価償却資産を含むものとされます。
① 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入されます。
② 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができます。
③ 上記①及び②以外の資産に係るものは、取得価額に算入されません。
Ⅳ 贈与等の際に支出した費用
「贈与等により取得した資産の取得費等(所法60①一)」に規定する贈与等により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、その贈与等に係る受贈者等がその資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときは、その費用のうちその資産に対応する金額については、前述したⅠ及びⅢの規定により各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、その資産の取得費に算入することができます(所基通60-2)。
おわりに
個人が贈与、相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)によって取得した減価償却資産の取得価額については、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなして計算することとされますので、減価償却費の計算の基礎となる取得価額及び取得時期は、贈与者又は被相続人の取得価額及び取得時期を引き継ぐこととされます(所法60①一,所令126②)。
この場合における減価償却の方法の選定に関しては、取得価額を計算する場合の「減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなす」旨の規定は働きませんので留意して下さい(所令120の2①一,所基通49-1)。例えば、250%定率法を適用していた減価償却資産を平成24年4月1日以後に贈与を受けた場合には、贈与者が250%定率法による減価償却の方法を適用していても、受贈者において償却の方法を選定していなかった場合には、定額法(個人の法定償却方法)によることとされます。
■ 使用人賞与の損金算入時期 [2017.11.28]
○ 使用人賞与の損金算入時期
はじめに
使用人賞与は、原則として実際にその支払が行われた日の属する事業年度において損金の額に算入することとされています。ただし、未払賞与については、例外として実際に支払いが行われたものと同様な状態にあるものに限定し、損金算入が認められています。
そこで、本稿は、使用人に対して支給した賞与の損金算入時期の概要とその実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 制度の概要
1 原則(法令72の3①三)
法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与のうち、下記2に掲げる賞与以外のものについては、その支払をした日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
2 例外
(1)支給予定日が到来している賞与(法令72の3①一)
法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与(使用人兼務役員に対する使用人部分を含みます。以下同じ)のうち、労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来しているもの(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限ります。)については、その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
(2)決算賞与(法令72の3①二)
法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与のうち、次に掲げる全ての要件を満たすものについては、その支給額の通知をした日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
① その支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
② ①の通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に支払っていること。
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
Ⅱ 支給額の通知(法基通9-2-43)
法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、上記Ⅰ2(2)に掲げる「通知」には該当しないこととされます。
Ⅲ 同時期に支給を受けるすべての使用人(法基通9-2-44)
法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに上記Ⅰ2(2)に掲げる支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。
おわりに
上記Ⅰ2(2)に掲げる決算賞与を未払計上する場合には、実際に通知書を作成して使用人に交付し、その写しに使用人の確認印を受けるなど使用人に対する通知の事実を後日立証できる様にすべきでしょう。また、①使用人に対して支給額の通知を行ったとしても支給日までに退職した者に対しては賞与を支給しなかったケース、②結果的に退職した者がいなかったため通知した金額を全額支給したケースについても、就業規則などでその通知した支給額について退職者には賞与を支給しないこととされている場合には、その未払賞与は、損金の額に算入することはできません。特に、社会保険労務士が作成している就業規則の基本書式を採用している会社においては、税務調査で問題となっているようですので留意して下さい。
■ 法定相続情報証明制度の創設 [2017.10.17]
○ 法定相続情報証明制度の創設
はじめに
平成29年5月29日から全国の登記所(法務局)において、法定相続情報証明制度(以下単に「本制度」といいます。)がスタートしました。本制度を活用することによって、被相続人名義の預貯金・有価証券の名義書換え及び不動産の相続登記等の際、除籍・戸籍謄本等の相続関係書類一式を金融機関、証券会社及び登記所等に何度も提出する必要がなくなり、各種相続手続きの円滑化が図られます。
そこで、本稿は、本制度の概要とその実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 制度の概要
1 申出
被相続人の法定相続人又は代理人は、①必要書類の収集、②法定相続情報一覧図の作成、③法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の記載を行い、これらの必要書類を登記所に申出します。また、上記②及び③の記入様式は法務局ホームページに掲載されています。
なお、申出は、郵送(返信用封筒及び郵便切手を同封)によることも可能とされます。
2 確認及び交付
登記所における登記官は、上記1①から③の必要書類等を確認し、②法定相続情報一覧図を保管(5年間)します。
そして、申出をした相続人又は代理人に対して認証文付きの法定相続情報一覧図の写し(以下単に「一覧図の写し」といいます。)が無料で交付(相続手続に必要な範囲で複数通発行可)されます。また、同時に上記1①の必要書類が返却されます。
3 利用
交付された一覧図の写しを利用することにより、相続人及び手続の担当部署双方の各種相続手続きの負担が軽減されることとなります。
なお、本制度の導入後であっても、除籍・戸籍謄本等の相続関係書類一式をそれぞれの手続の担当部署に提出する従来の方法での相続手続も行うことができます。
Ⅱ 代理人
上記Ⅰ1の代理人となることができるのは、法定代理人のほか、①民法上の親族、②資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士に限ります。)とされます。
Ⅲ 必要書類
上記Ⅰ1①の必要書類は、次のとおりとされます。
① 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本
② 被相続人の住民票の除票又は被相続人の戸籍の附票
③ 相続人全員の戸籍謄本又は抄本
④ 申出人(相続人代表)の氏名・住所を確認することができる公的書類(例:運転免許証のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー等)
⑤ 相続人全員の住民票記載事項証明書(住民票の写し)
⑥ 代理人が申出をする場合
(イ)委任状
(ロ)民法上の親族が代理をする場合には、申出人と代理人が親族関係であることが分かる戸籍謄本
(ハ)資格者代理人が代理をする場合には、資格者代理人団体の身分証明書の写し等
Ⅳ 申出可能な登記所
上記Ⅰ1の申出をすることができる登記所は、①被相続人の本籍地、②被相続人の最後の住所地、③申出人の住所地、④被相続人の名義の不動産の所在地を管轄するいずれかの登記所とされます。
おわりに
「法定相続情報一覧図」は、登記所において5年間保管されています。また、各種相続手続きにおいて、「一覧図の写し」が追加で必要となった場合には、5年間であればいつでも無料で再交付を受けることが可能とされています。ただし、再交付の申出をすることができるのは、上記Ⅰ1③の「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を記載し、登記所に申出をした当初の申出人に限られますので、他の相続人等が再交付を希望する時には、当初の申出人の委任状が必要になりますので留意して下さい。
■ 退職した従業員に係る未払賃金等の課税関係 [2017.09.28]
○ 退職した従業員に係る未払賃金等の課税関係
はじめに
ブラック企業対策と称して低価格の相談料で労働問題を専門に扱う弁護士等が急増しているそうです。この傾向を受けて、円満退社した元従業員から未払い残業代及び慰謝料の支払請求を受け、和解、裁判等、示談及び協議等(以下単に「和解等」といいます。)により解決するケースも増加しているようです。
そこで、本稿は、和解等による解決金としてこれら金員が発生する場合の課税関係とその実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 未払い残業代等の課税関係
1 元従業員の取扱い
和解等によって支払を受ける金員は、その性質によって課税関係が異なります。
和解金の発生の要因が雇用関係に基づくものであり、労務の対価としての性格を有するものであれば、「給与所得」又は「退職所得」とされます。
このうち、和解調書において「時間外労働の実態及び未払い残業代を支払うことを認める」と記載されていれば、その未払い残業代は各支給日の属する年分の給与所得として課税されます(所基通36-9)。
そこで、元従業員においては、各支給日の属する各年分における年末調整のやり直し又は所得税の申告書等(期限後申告書及び修正申告書)の提出が必要となります(所基通190-4)。
なお、未払い残業代について、遅延損害金が支払われる場合には、その遅延損害金は、その支払われた日の属する年分の「雑所得」として課税対象とされます。
2 法人の取扱い
和解等によって元従業員に対して支出する金員で、その支出の要因が雇用関係に基づくものであり、その労務の対価として支払われるものであれば、使用人給与としてその賠償すべき金額が確定した日(いわゆる和解の成立した日)の属する事業年度の損金の額とされます(法法22③二)。
Ⅱ 慰謝料の課税関係
1 元従業員の取扱い
和解金の性質が、「心身に加えられた損害に基因するもの(所令3 0①一)」及び「相当の見舞金(所令30①三)」に該当するものであれば、所得税は課されません。
ただし、和解金名目の金員であっても、元従業員の未払い残業代に相当する金員については、その実態に応じて「給与所得」として課税対象とされます。また、未払い残業代のうちに、セクシャルハラスメント等の慰謝料に該当する部分が含まれている場合には、所得税は課税されません。
なお、非課税とされる見舞金等の額に該当するか否かの判断は、心身に加えられた損害の程度等を考慮して社会通念上相当と認められる範囲内の金額に限られますので、相当の見舞金を超える部分は、「一時所得」又は「雑所得」として課税対象とされます。
2 法人の取扱い
法人が元従業員に対して支払う和解金は、和解等によって、その賠償すべき金額が確定した日(いわゆる和解の成立した日)の属する事業年度の損金の額に算入します。
Ⅲ 源泉所得税の課税関係
1 元従業員の取扱い
和解金として支払われた損害賠償金の金員でも、その支払を受ける者において給与等として課税されるものである場合には、その支払者はその支払の際に所得税の源泉徴収を行わなければなりません(所法28①,同法183①,所基通161-46)。
この場合において、法人において、下記2に掲げる年末調整が行われていない場合(源泉徴収票の摘要欄に年末調整未済と記載されている場合)には、各支給日の属する各年分の給与所得の申告が必要となります。その際、法人より各年分の源泉徴収票が本人に交付されますので、その源泉徴収票を添付して確定申告(期限後申告等)することとなります。
なお、源泉徴収票の作成日において未払残業代があり、法人において未徴収の源泉徴収税額がある場合には、源泉徴収票の源泉徴収税額の欄は、その未徴収税額が内書き表示されています。
2 法人の取扱い
法人は、各年分の未払残業代についてその支払の際に源泉徴収を行い、その支給の日の属する月の翌月10日までに国に納付します(所法183①)。
この場合において、原則として、法人において本来、未払残業代が支払われるべきであった年分の年末調整をやり直さなければなりません(所基通190-4)。
おわりに
法人が退職した元従業員から未払い残業代及び慰謝料の支払請求を受け、和解等による解決を行う場合、和解調書への記載方法等にかかわらず、課税庁サイドにおいては、その過程である訴状の内容、答弁書の内容、準備書面の内容などの裁判資料を基として、和解金の発生源泉に沿った事実認定を行い、実態に沿った課税がなされることとなりますので、留意して下さい。
■ 仮想通貨に係る消費税の見直し [2017.08.18]
○ 仮想通貨に係る消費税の見直し
はじめに
近年、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどのICTのサービス及びビジネスの進展等を背景にインターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨(例:ビットコイン、イーサリアム等)の取引が急増しています。
こうした中、「資金決済に関する法律」及び「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等が改正され、平成28年5月に仮想通貨交換事業者の登録制度の導入、マネー・ロンダリング対策規制及び利用者保護のためのルールの整備等を柱とした「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号)」が成立し、平成29年4月1日から施行されています。
これを受けて、平成29年度税制改正では、仮想通貨の取引に係る消費税の課税関係の見直しが行われましたので、その概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 改正の内容
1 非課税の範囲の拡充(新消令9④)
資金決済に関する法律の改正により仮想通貨が支払の手段として位置づけられること及び諸外国における課税関係を踏まえて、仮想通貨の取引について、消費税が非課税とされました。
2 仮想通貨の定義(新資金法2⑤)
「仮想通貨」とは、「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除きます。以下同じ)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」又は「不特定の者を相手方として相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」とされています。
3 適用関係(新平成29年改正消令附則1,同附則2,同附則8)
上記1の改正は、平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れから適用されます。
なお、改正前に譲り受けた仮想通貨について、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合の仕入れ区分は、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当するものとされます。
また、事業者が、平成29年6月30日に100万円(税抜き)以上の仮想通貨(国内において譲り受けたものに限ります。)を保有する場合において、同日の仮想通貨の保有数量が平成29年6月1日から平成29年6月30日までの間の各日の仮想通貨の保有数量の平均保有数量に対して増加したときは、その増加した部分の課税仕入れに係る消費税につき、仕入税額控除制度の適用を認めないこととされます。
おわりに
平成29年7月1日以後における非課税とされる支払手段の範囲に、仮想通貨が追加されることとされました。
なお、事業者が行う仮想通貨の譲渡の対価については、その性格に鑑み、法定通貨等の支払手段と同様に、課税売上割合の計算上、非課税売上高(分母)には含まれないこととされますので留意して下さい(消法30⑥,新消令48②一)。
※お知らせの「消費税課税売上割合の算式」をご参照ください。
■ 経営力向上設備等に係る償却資産税の特例の拡充 [2017.07.27]
○ 経営力向上設備等に係る償却資産税の特例の拡充
はじめに
平成28年度税制改正では、経営力向上計画の認定を受けた経営力向上設備等に該当する新品の機械装置に係る償却資産税が最初の3年間、課税標準となるべき価格の1/2に軽減される、いわゆる償却資産税の特例(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
平成29年度税制改正では、中小・小規模事業者の「攻めの投資」を後押しするため、地域・業種を限定した上で、本特例の対象資産が拡充されることとなりました。
そこで本稿では、改正された本特例の概要と実務上の留意点について解説します。
Ⅰ 対象資産の拡充
1 適用要件(新地方法附則15-43)
中小事業者等が平成29年4月1日から平成31年3月31日までに中小企業等経営強化法に規定される認定経営力向上計画に基づき経営力向上設備等に該当する機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限ります。)、器具備品及び建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除きます。)(以下「機械装置等」といいます。)で、一定の規模以上のものを取得した場合には、その機械装置等に対して課される固定資産税の課税標準は、その機械装置等に対して新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年度分の固定資産税に限り、その機械装置等に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の2分の1とされます。
2 経営力向上設備等の範囲(新地方規附則6-74~76,強化法13④,強化規8)
前述した1に掲げる「経営力向上設備等」とは、商品の生産若しくは販売又は役務の提供の用に供する施設、設備、装置又はプログラムであって、経営力向上に特に資する①及び②の要件を満たす機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限ります。)、器具備品並びに建物附属設備(償却資産として課税されるものに限ります。)とされます。
① 販売が開始された時期に係る要件
販売が開始されてから、機械装置:10年以内、工具:5年以内、器具備品:6年以内、建物附属設備:14年以内のものであること。
② 経営力向上要件
旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの。
3 取得価額要件(新地方令11)
前述した1に掲げる「一定の規模以上のもの」とは、機械装置(1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの)、工具・器具備品(1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの)及び建物附属設備(一の取得価額が60万円以上のもの)の設備の区分ごとに取得価額要件が設けられています。
Ⅱ 地域・業種の限定(新地方規6附則75三,同76三,平成29年3月31日総務省告示132)
「地域・業種の限定」とは、「最低賃金が全国平均未満の地域にあっては全ての業種、最低賃金が全国平均以上の地域にあっては労働生産性が全国平均未満の業種」に限定するものとされます。
具体的には、平成29年度税制改正により新たに追加された工具(測定工具及び検査工具に限ります。)、器具備品及び建物附属設備については、①7都道府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府)では対象業種が限定され、②その他40道県では全業種対象とされます。
なお、機械装置であれば全国・全業種対象とされます。
おわりに
経営力向上設備等を取得し、その設備について本特例の適用を受けるためには、原則として①工業会証明書を取得後、②中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、③対象設備を取得するという手続きが必要とされます。
ただし、経営力向上計画の申請に先立って計画を開始し、経営力向上設備等を取得した後に経営力向上計画を提出する場合には、例外として①工業会証明書を取得後、②対象設備を取得、③設備投資後60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。この場合において、償却資産税の賦課期日は毎年1月1日であることから、本特例の適用を受けるためには、遅くともその設備を取得した年の12月31日までに経営力向上計画の認定を受ける必要がありますので留意して下さい。
なお、国税における経済産業局による「投資利益率に関する確認書(B類型)」は、本特例の適用のためには利用できませんので、別途、工業会証明書が必要となります。
■ 中小企業経営強化税制の創設 [2017.06.20]
○ 中小企業経営強化税制の創設
はじめに
平成29年度税制改正では、中小・小規模事業者の「攻めの投資」を後押しするため、生産性の向上につながる設備投資を支援する税制(いわゆる中小企業経営強化税制,以下「本制度」といいます。)が創設されました。
本稿では、本制度の改正の概要について解説します。
Ⅰ 制度の概要
1 適用要件(新措法42の12の4①②,新措規20の9①)
青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具・器具備品、建物附属設備及びソフトウエアで、経営力向上設備等(経営力の向上に著しく資するものとして中小企業等経営強化法に規定される「生産性向上設備(A類型)」及び「収益力強化設備(B類型)」とされます。)に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その中小企業者等の営む指定事業の用に供した場合には、その取得価額から普通償却限度額を控除した金額までの特別償却(即時償却)とその取得価額の7%(資本金の額等が3,000万円以下の特定中小企業者等にあっては、10%)の税額控除との選択適用ができます。
ただし、税額控除における控除税額は、本制度、「中小企業投資促進税制(措法42の6)」及び「商業・サービス業・農業水産業活性化税制(措法42の12の3)」の特別税額控除措置と合計して当期の法人税額の20%を上限とし、控除限度超過額は1年間の繰越しができます。
2 取得価額要件(新措令27の12の4②)
前述した1に掲げる「一定の規模以上のもの」とは、機械装置(1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの)、工具・器具備品(1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの)、建物附属設備(一の取得価額が60万円以上のもの)及びソフトウエア(一の取得価額が70万円以上のもの)の設備の区分ごとに取得価額要件が設けられています。
Ⅱ 経営力強化向上設備等の範囲
1 生産性向上設備(A類型)の範囲(強化規8②一)
生産性向上設備(A類型)とは、次の①及び②の要件を満たす機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限ります。)、器具備品(電子計算機にあっては、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得又は製作するものを除き、医療機器にあっては医療保険業を行う事業者が取得又は製作するものを除きます。)、建物附属設備(医療保険業を行う事業者が取得又は製作するものを除きます。)及びソフトウエア(設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限ります。)をいいます。
ただし、ソフトウエア及び旧モデルがないものは、次の①の要件を満たすものとされます。
① 販売が開始された時期に係る要件
販売が開始されてから、機械装置:10年以内、工具:5年以内、器具備品:6年以内、建物附属設備:14年以内、ソフトウエア:5年以内のものであること。
② 経営力向上要件
旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること。
2 収益力強化設備(B類型)の範囲(強化規8②二)
「収益力強化設備(B類型)」とは、その投資計画における年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるもの(経営力向上に係る投資利益率要件)であることにつき経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された機械装置、工具・器具備品(電子計算機にあっては、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得又は製作するものを除き、医療機器にあっては医療保険業を行う事業者が取得又は製作するものを除きます。)、建物附属設備(医療保険業を行う事業者が取得又は製作するものを除きます。)及びソフトウエアとされます。
おわりに
経営力向上設備等を取得し、その設備について本制度を受けるためには、原則として①工業会証明書(A類型)又は経済産業局による投資利益率に関する確認書(B類型)を取得後、②中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、③対象設備を取得するという手続きが必要とされます。
ただし、経営力向上計画の申請に先立って計画を開始し、経営力向上設備等を取得した後に経営力向上計画を提出する場合には、例外として①工業会証明書(A類型)又は経済産業局の確認書(B類型)を取得後、②対象設備を取得、③設備投資後60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。この場合において、本制度の適用を受けるためには、制度の適用を事業年度単位で見ることから、遅くともその設備を取得し事業の用に供した事業年度内に経営力向上計画の認定を受ける必要がありますので留意して下さい。